男の楽園 女の地獄

どちらかと言えば女性向け?官能小説 7/23

コミュニケーション

緒方が夜、戻ってきて、茉莉の部屋を訪れた。

茉莉は初めて、緒方の部屋と茉莉の部屋が小さなドアでつながっているのを知った。

まあ、これでは新婚の寝室だわ・・

緒方の家は見て回ったことはないが、そうとう豪華なのだろう・・と想像させる。

緒方は二人分の夕食を運ばせて・・

ダイニングもあるでしょうに・・という茉莉の想いとすれ違っていた。

緒方は裏で使用人に細かく茉莉の、食事状況を見ながら栄養剤を水に混ぜるよう指示しながら、今日は茉莉が三分の一は夕食を自分で食べられたことにほっとした。

やはり若い・・回復ももう少しだろう・・

「茉莉 院に戻りたくはないかい?」

緒方が静かな声で聞く

茉莉は、思ってもいないことを言われて、かなりびっくりしたようだ

確かに茉莉の在学期間は1年残っている でも・・

(もう、戻れない世界・・)

そんな想いも茉莉は抱いている・・

「いいえ・・私・・両親に大学まで行かせてもらったんですもの・・もう働いても良い年だと思うの・・一郎さんさえ良ければ・・」

気をつけて言葉を選ぶ。

茉莉の優しさはわかる。だが、それ緒方を打ちのめす言葉でもあった。

茉莉は目の前にあった未来をあっさり捨てる・・それも今回の出来事があったからだ・・茉莉にできる仕事?  世間知らずの茉莉に? 普通は両親が考えるのだろうが茉莉に両親はもういない・・緒方はうなった・・

そりゃ、選ばなくてはいくらでもあるだろう

ウエイトレス・・? 茉莉に群がる男と無邪気に対応している茉莉を想像して気分が悪くなった・・

「一郎さん・・?」

あくまで無邪気に声をかける茉莉に、「ゆっくり、考えよう・・茉莉・・」

と声を出すのが精いっぱいで・・

とりあえず・・茉莉の・・体調が戻るまでは・・

と時間のばしする緒方だった・・

 

 

 

 

葛藤

茉莉にとっても、今後はよくわからない問題だった。

第一、緒方がどんなつもりかわからない・・

ホテルを出られたことには、ほっとした

なんだか、あそこは人間の醜さ、欲望・・そういうものの集まりのような気がして

息がつまりそうだった。

茉莉にとっては自分に向けられた責めより、そういったものが窒息を招きそうだったのだ。

そうして、自分を責めながら、泣いている緒方の姿が見える・・

不思議なものだ、誰より風格堂々と振舞っていた緒方が・・

よくわからないが、私は今「緒方のもの」という扱いなのだろう。

世間的には・・

でも、緒方はすぐ自由にしてくれるのではないか・・

茉莉は緒方の潔癖さから、そう想像した。

が、本当は緒方がさらに色々、考えていることを茉莉は知らない

茉莉を自由にするのは簡単だ。

世慣れた女なら金を渡せばことは済む。

だが、茉莉の場合は・・?

まだ、学校も卒業していない娘だ。一応大学は終えている。院に進んだだけだが・・

ただでさえお嬢様育ちで、何も知らないからこそ今回こんなことにあったのに?

ここで茉莉を放りだせば、どうなるか・・

が、私に足長おじさんのマネができるか?

こんなに茉莉を欲しているのに!

両手に顔をうずめている緒方の姿をみたら茉莉はさぞかし仰天しただろう・・

 

NEST DAY

茉莉は自分のベッドが用意されていたが、クセでカウチで眠っていた。

その横に座りながら、緒方が茉莉の頬にそっと触れる。

感触で眼を覚ます茉莉・・

まっすぐに緒方を見つめる。

(初めから、やり直そう・・そのチャンスがあるなら・・)

緒方の想いを知ってか知らずか、茉莉が

「おはようございます。ご主人様・・」笑顔で呼びかける

緒方は喘いだ・・

「茉莉・・やめてくれないか・・僕はもうご主人様ではない・・懺悔をしている・・

ただの人間だよ・・」

茉莉の回転は速かった

緒方は、多くにあるように、あのホテルから買い取ったなら「自分が救世主」と考えるバカな人間ではない。

奴隷は売る方も買う方も犯罪。

今も、犯罪者の自分を責めて、警察に自首すべきか迷っている・・

そんな彼をどうしてせめられるだろう?

「一郎さん 起こして・・私に朝食を食べさせて・・」

わざと緒方に「様」をつけないように言う。

今、「様」を付けたらもっと苦しむだろうから・・

茉莉はカウチで緒方と並んで緒方にもたれかかりながら、緒方の手からイチゴを食べさせてもらっていた。

茉莉の才能・・相手を癒す才能・・

もっともっとひどい責めを受けた茉莉より緒方が苦しんでいるのは伝わってくる・・

それから、ちょっと疲れたそぶりをして、緒方を仕事に送り出す・・

茉莉にも世界がぐるぐる回り始めた・・

 

 

休暇の終わり

「明日 チェックアウトするからね」

唐突に緒方に言われて、茉莉は戸惑った。

ご主人様が変わるという意味だろうか・・?

ノックとともに荷物をボーイが運んでくる。

緒方は無造作に受取、開けた。

注文した品がすべて入っているか確認している様子だ。

納得したように箱を茉莉に渡してきた。

「明日の茉莉の服だ・・」

言われて、中を開けてみる・・

下着からワンピースまですべてそろっている。

「いつまでも休暇をとっていられないからね・・」

??

「茉莉・・お前は僕が買い取った・・」

「あ・・」

茉莉は一瞬、返事ができずにいた。

それは、このくるくるとご主人様が変わり続けるホテルにいなくていいこと・・

それと・・緒方一郎の専属奴隷になったこと・・

茉莉はどう考えていいかわからなかった・・

緒方は茉莉の思考を停止させたかったらしい

「茉莉 最後の夜に乾杯しよう」

無理やり強いワインをすすめられて・・茉莉はそのまま眠りにおちた。

緒方はこの件を、できるだけ茉莉が何も考えるスキがない間に進めたいらしい・・

翌日も、「着替えなさい」とバスルームに押しやられ、その日は朝食無しで出発した。

なんと、ホテルのヘリポートから緒方家のヘリポートへ直行である。

そのまま、緒方は仕事と言って出て行った。

茉莉は久しぶりの服・・上等の高級なレースの下着に白いワンピースで・・

それは、ひどく似合っていた

緒方家の使用人に迎えられ、ただ、それだけで疲れ切った

そんな茉莉を「茉莉の部屋」と教えてくれた年長の使用人が、一人で過ごせるよう計らってくれたようだ。

上等で広い部屋で、続き部屋に明るいドレッサールームとバスルームがついている。

昼食はたっぷり贅沢ななものが運ばれてきたが、「申し訳ないけれど・・」と茉莉は謝りながらあまり手を付けらなかった。

ピッチャーとグラスだけがいつでも飲めるようにとテーブルに残された。

緒方一郎が帰宅してはじめて見るのは茉莉の寝顔となる・・

 

 

ショータイム

軽い夕食を済ませても、まだ寝るには早い。

緒方が「ショーでものぞくか」と茉莉を連れだした。

それは円形のホールで 下の壇上に奴隷が

周りをぐるっと 個室席が並び・・パリのオペラ座のようだが・・

圧倒的に空気が違う

真ん中の複数の奴隷たち・・が全員吊られている。

彼女たちのおびえた表情から、始まることが予想される。

「ここはお互いの奴隷を観賞する場所でね・・」と緒方。

茉莉は今は観客席にいるが、あの真ん中に立たされる可能性もあるのだ

茉莉が身を震わせた

ドラムロールとともにショーが始まり 茉莉は眼をそむけている

敢えて見ろ・・と緒方は言わなかった

が、茉莉は自分の来ているガウンの意味を知らなかった

このホテルで女性は裸体

なのに 今日 茉莉はドレスガウンをまとって歩いている

「持ち帰り」

緒方が茉莉を買い取ったことを、茉莉はまだ知らない・・

 

 

 

会話

「茉莉は全く眠り姫だな。寝てばかりいるんじゃないか?」

眼を覚ました茉莉に、新聞を読んでいた緒方が揶揄するように声をかけた。

確かにここに来てからの茉莉は・・プレイか寝ているか・・だったような気がする・・

「夕食はどうする?僕はあまりお腹がすいてないんだが・・?」

「あ、私も・・」

茉莉の答えを緒方は予想していたらしい

「じゃあ ルームサービスで軽く済まそう」

なにか軽食をたのんでいるようだ。

「その ガウン似合うね・・」

「あ、ありがとうございます・・」

茉莉には戸惑うことばかりだった。

緒方が何の気まぐれを起こしたのか・・

「茉莉は・・」

(本音どう思っている・・?)

緒方は聞けなかった。

当たり前に考えれば答えは、すぐ出る・・

が、・・・

「ご主人様?  今日は色々気を使ってくださいまして

ありがとうございました」茉莉が小さく笑顔を見せる。

緒方は逆にうなだれた。

これが、その辺の女だったら・・今までの奴隷扱いから一転変貌の例になるが・・水に流したうえで「今回の件」について礼を言っている。

好きで来たわけでもないホテルで・・

何人の女が 人間が ここで「Thank you 」が言えるだろう?

無邪気な「Thank you 」を。

そして・・この笑顔・・笑顔が見たかったんだな・・

(私の 本心は・・)

頼んだ軽食には茉莉が以前、おいしいといった「フルーツ盛り合わせ」もある。

茉莉はさりげなく察した。

Thank you so much・・

これは茉莉のつぶやきだ。

緒方には聞こえていないだろう・・

二人の無言に近い時間・・

(緒方には はっきりと茉莉のつぶやきが聞こえていた・・

ここに来る寸前、スイスの花嫁学校に在籍していた茉莉にとって本音は 英語のほうが語りやすいのかもしれない・・

それだけに かえって「please」と「Thank you」 を自然に使いこなす茉莉に圧倒される。キリスト教の博愛精神を受け継いでレディーの「貴方を受け入れます・・」と感謝を自然にできるというのが 確かダイアナ妃が出た学校の理念だったはずだ・・)

(そんな 茉莉だからこそ 僕は・・)

 

 

 

 

 

エステ

茉莉が目を覚ました時、緒方はいなかった。

いつものモーニングを食べる時間よりが早い・・

もう、済ませたのかしら・・?

茉莉の分のモーニングセットは8時ジャストに届いた。

いつも、食べなかった茉莉だけれども・・

さすがに少しは手を付けようと、ほんの少し食べてみた。

上等の食材を使っているのがわかる。

ここは本当に高級ホテルなんだわ・・

次にノックして入ってきたのは部屋メイドだった。

「本日はエステのご予約が入っております」

その老婆が言う。

ここでは、女性は裸体というルールだが、この60過ぎの老婆は違うらしい。

茉莉はきょとんとしていると

「このお部屋のバスルームをお借りしますからね」

厳しいのだか、丁寧なのかわからない口調。

老婆は、後にも二人入ってきた。

今、お湯を入れてますから・・

エステ中は喉が渇きますからね お好みの飲み物は?」

「み、水で・・」

圧倒されて茉莉が答えると

ふんといった風に、水と2種類のジュースを盆にのせて用意した。

「まずはゆったりと お湯で体をほぐしてください」

茉莉はそのあと、今までの拷問とこの拷問がどちらがラクだろうという気持ちになりながら、老婆の指示通り

沐浴 エステ・・と3時間を過ごした。

さらに恥ずかしかったのは傷の手当だ。

「汗をかいた分、水分が出て行ってますから必ず飲んでください」

目の前に押し付けらたジュースを茉莉は素直に飲んだ。

「別嬪さんだね、緒方様が夢中になるわけだ・・」と独白。

今まで、裸体とはいえ空調が整っていたのと夏という気候もあって茉莉は特に

寒さなどの苦労はしなかった。

が、ドレスガウンをおいていかれ「せっかく磨いた肌が汚れると困る」

という老婆の一言で着せ掛けられた。

茉莉は正直、ここに連れてこられてからの疲れがたまりにたまり・・

そのまま寝入ってしまった

緒方が戻ってきたことも知らず・・

緒方は黙って茉莉の寝顔を見ていた

(・・・・・・)

あどけなささえ見せて眠る茉莉

(全く・・お前は凶悪犯と同じだ・・!)

唐突に自室に向かう

緒方には自分の感情を整理する時間が必要だった・・